毎日がカレー曜日
 削除するのは簡単だ。

 S値を中和して、基の数値に戻すだけなのである。

 それが、兄が考え弟が形にした『01理論』だった。

 S値が消えれば、自然とR値は消える。

 心がなければ、霊は姿を残せないのだから。

「どうかね?」

 主の呼びかけに、直樹は振り返った。

 メガネがキラーンと光る。

「大丈夫……余裕ですよ」

 直樹は、堂々とそう宣言する。

 何もかも、いまの一瞬で理解できたといわんばかりに。

 絶対わかってねぇだろ、お前。

 解析結果を出すのは、孝輔だ。それをみなければ、兄に理解できるはずがない。

 彼は、手袋の手を振り回すだけなのだから。

「もう少し調べたいことがありますので、お時間をいただけますか?」

 この流れが、常套手段だった。

 まずはったりをかまし、依頼主を安心させる。

 そのあとで、分析結果を話し合い、削除方法を検討するのだった。

 分析結果は、あたかも最初から直樹が知っているかのように振舞われることとなる。

「分かった。それでは、使用人を一人つけておくから、必要があれば使ってくれ」

 兄のパフォーマンス力を、またしても見る羽目となった。

 依頼主は、すっかりヤツの言葉を信じてしまったらしい。

 ゴーストバスター・ナオキの評判は、きっと調査済みなのだろう。

 パタン。

 使用人を一人だけ残し、主は出て行った。

 猫でも撫でにいくのだろうか。
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