毎日がカレー曜日
「それじゃ、どれがあの着物の子の親玉かわかんねーんじゃ?」

 S値反応を出しているものがいっぱいあるというのなら、あの別の壷だけが特別というわけではないだろう。

 犯人の可能性は、部屋中にあるではないか。

「でも…」

 孝輔の言葉に、恐縮そうにサヤが口を挟む。

「でも…この部屋で怒っているのは、あの壷だけです」

 指の先は、S値の壷。

 そういえば、最初に彼女がそう言ったではないか。

『怒っている』、と。

「九十九神は、みんな姿を現していたずらをするわけではありません。ただ、自分の置かれている立場を不満に思った時に、持ち主に何らかの働きかけをしてきます」

 流れる川のような、サヤの声。

 孝輔は、思い違いをしていた。

 霊能力者である、兄のヤイバにくっついてまわっていただけの妹ではなかったのだ。

 彼女自身もまた、その能力を持つ者で、それを直樹は知っていたのだろう。

 直樹・孝輔兄弟にはない、アナログの古典的な力。

 それは、直樹にとっては恰好の利用材料だったのか。

「というわけだ、孝輔くん」

 突然軌道修正を余儀なくされた弟の頭の中も知らず、わざとらしく『くん』までつけた兄に、肩をぽんと叩かれる。

「そろそろ、ソフトをバージョンアップしようじゃないか」

 は?

 九十九神から、どうしてソフトバージョンアップが出てくるのか。
< 23 / 53 >

この作品をシェア

pagetop