毎日がカレー曜日
「私は、営業・接客・請求処理までやっているからそんな暇はない。何なら仕事を入れ替えてみるか?」

 お前に営業が出来るならな~~。

 カッカッカ。

 昔見た、時代劇の偉いお爺さんのような笑い方で、直樹は勝ち誇った。

 性格上、弟にそれが出来ないと分かっているのだ。

 ぐぐぐぐぐ。

 空中の孝輔の指は、拳になって震えた後、ようやく引かれていった。

 おそらく彼はもう、チキンの行方のことは忘れているだろう。

 クスッ。

 おかしくて、サヤは笑みをこぼしてしまう。

 完全に、直樹が主導権を握っている。

 弟の扱い方を全て熟知しているのが分かった。

 だが、チキンを取るためだけにそんな話を持ち出したというのなら──直樹は、何とも人が悪い。

 孝輔は、ここ数日事務所にこもって持ち帰ったデータを解析し続けているというのに。


 昨日着ていた服と同じだから、多分彼はここに泊まったのだろう。

 E値とかS値とかR値とか、この事務所に入って初めて聞いた言葉だった。

 ヤイバから、直樹は変わった除霊をするとは聞いていたが、サヤの予想がまったく追いつかないほど遠い世界だ。

 コンピュータを使い、霊を数値として扱う。

 それには、まだサヤは慣れていない。

 見知らぬ世界を、はたから見ているだけの気分だった。
< 27 / 53 >

この作品をシェア

pagetop