毎日がカレー曜日
「あの男に、そんなこと言ってみろ」

 一瞬にして、怒りに打ち震える孝輔。

「『無能』だの『役立たず』だの言われるに決まってる! それで、もしヤツにE値を先に発見されたら、絶対一生チクチク言われるんだぞ!」

 ないんだったら、でっちあげてでも作ったる!

 最後の言葉は本気ではないだろうが、兄を凌駕することへの執着がとても大きいことが伝わってきた。

 それはもう、熱風となってサヤに押し寄せてくる。

 直樹も弟には人が悪いところがあるようで、これまで彼のコンプレックスをうまく刺激してきたのだろう。

 おかげで、負けず嫌いであきらめの悪い性格になったようだ。

 それ自体は、サヤも悪いことではないと思う。

 どういう過程で出来上がった性格かは、除外するとして。

 そんな彼のE値発見に、何とか協力してあげたいのだが。

 ん~。

 怒りは、発作的に起きるものと、じっくり持続するものとある。

 古い壷は、後者に当たるだろう。

 もし、直樹たちが言うように、怒りを数値に変えられるというのなら、後者の方は、きっと数値の変化がほとんどないに違いない。

 と、いうことは。

 あの九十九神をもっと怒らせることができたら、見えるのかしら。

 理論上は妙案に見えるが、具体性と倫理性がなかった。

 どうしたらあの九十九神が怒るのかも分からないし、もしも怒らせたらとんでもない惨事を引き起こしてしまうかもしれない。

 悩ましい選択だった。
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