毎日がカレー曜日
 着物の少女の存在が、ブレる。

 一瞬かき消えそうになったが、再び現れる。

 そしてまたかき消えそうになる。

 古い壷のS値が、跳ね上がった。

 部屋の中の空気が、唸りさえしたように思える。

「そう、なのね」

 端末の数値の動きに釘付けになっている孝輔をよそに、サヤは古い壷の方を振り向いた。

 サヤは、その荒れる空間に近づいて。

 壷をかき抱くように腕を回した。

「大丈夫 本当は お前が 一番 美しい」

 刹那、部屋の唸りも、S値の変動も、全て何もなかったかのように元に戻った。

 一体。

 一体、サヤは何をやらかしたのか。

 壷に回した腕を解き、同情深げにそれに視線を送る彼女。

 そして、ゆっくりと孝輔の方へと戻ってくる。

「孝輔さんのおっしゃるとおりでした」

 にこり、はなかった。

 どちらかというと、悲しげだ。

 壷の気持ちとやらに同調でもしたのだろうか。

「あの古い壷は、新しい壷に…『嫉妬』しているのでしょう」

 ああ。

 何となく理解した。

 あの古い壷が、どれほど依頼主に愛されていたのかは知らない。

 しかし、そこへ新しい壷がやってきた。九十九神もいないような、新人の壷。

 だが、その新しい壷は主人に愛され、古い壷には見向きもされなくなった。

 だから──妬んだ。
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