毎日がカレー曜日
「おい、起きろ」

 いやな匂いが鼻をつく。

 はっと目を開けると、すぐ近くに黒い何かが存在していた。

「○×△!!」

 それをなぎ倒すように起き上がる。

「てめ!」

 振り返りながら罵倒の声を吐きかけた。

 孝輔を起こすために、兄は黒い靴下の足を鼻面に突きつけていたのだ。

「うおっ」

 足を薙がれて態勢を崩しつつも、直樹はケンケンしながら靴下の足を守った。

 そして足元に置いてある革靴に、再びきっちりと収めなおす。

「おはよう愚弟……仕事だ」

 文句の大洪水が起きそうな孝輔を抑えるように、兄は先手を取った。

 見るとそこはもう、依頼主の屋敷。

 日は暮れ、無駄にライトアップされて綺麗なものだ。

 サヤもその光景に目を奪われている。

 夜にこの屋敷を訪れるのは初めてだった。

 昼間でも十分仕事は出来るのだが、『夜のほうがそれっぽく見える』、という理由だけで、除霊は必ず夜に行うと決まっていたのである。

 その理由を提案したのが誰かは、言うまでもないだろう。
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