毎日がカレー曜日
 手袋からマイナス値があふれていく。

 値の変動を見て、0ポイントになっていく流れを、全て孝輔が担当する。

 兄はああして、パフォーマンスを見せるだけだ。

 本来なら、手袋をその壷のところにおいておけば、同じ仕事は完了できる。

 これは、一人でも出来ることなのだ。

 仕事内容だけなら、地味なものである。

 しかし、直樹はパフォーマンスを行うことを譲らなかった。

 その方が、より直樹が活躍しているように見せられるからだ。

 かなりの不純な動機が含まれているにせよ、確かにそのパフォーマンスは、大きな功績をあげていた。

 彼が、『ゴーストバスター・ナオキ』なんて名前を背負っているのも、パフォーマンスのおかげである。

 さて。

 そろそろ、マイナス値が効き始める頃だ。

 パフォーマンスに興味のない孝輔は、ディスプレイと現実の視界を何度も何度も見比べた。

 着物の少女が、ゆがむ。

 S値をいじられ、R値を維持するのが難しくなってきたのだ。

 いつもどおり。

 まったく。

 問題などなく。

「ま、待ってください!」

 そう。

 突然、サヤが悲鳴みたいな声をあげるまでは、問題など何もなかった。

 室内にいるもの全てが、彼女を見る。

 彼女は、自分を抱きしめるように震えていた。

「やめて…お願いです。そんな消し方をしないで」

 脅える声。

 あ。

 孝輔はすっかり忘れていた。

『削除』を見せるのは、今日が初めてだったのだ。
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