毎日がカレー曜日

兄の肩書 弟の肩書

「仲がいいのですね」

 孝輔の額に絆創膏を張りながら、サヤはクスクスと笑う。

 奥のデスクでは、兄の直樹が新聞を広げてふんぞりかえっていた。しかし、直樹の顔にもいくつかの絆創膏が張られている。

「どこが!」

 山猫みたいにがーっと牙をむくと、サヤは救急箱を抱えたまま、びくっととびのいてしまった。

 兄を相手にしていた影響が残っていたことに気づいて、不承不承、孝輔は眉間のシワを解くことにしたのだ。

「……あんたに怒ってるわけじゃない」

 ぼそぼそぼそ。

 すぐそこにいる、兄に聞かれないくらいのかすかな声で、サヤの警戒を解こうとした。

 少し間があいた後、ゆーっくり足の先から彼女が近づいてきた。

「んで、なんでこんなとこで働くことになったんだ?」

 兄とは、途中でケンカに発展してしまったせいで、結論まで手に入れることはできなかった。

 多分、もう一回話を蒸し返しても似たような状況になりそうだったため、直接本人に聞くことにしたのだ。

「『こんなとこ』って何だ!」

 しかし。

 孝輔の表現が気に入らなかった兄から、突然鋭いツッコミが入る。

 新聞をクシャクシャにしてまで、言わなければならないことなのか。

「うっせえよ、ボケ! 仕事しろ! うさんくさい仕事を、よ!」

 いちいち口はさんでくるな!

 話がややこしくなるだろと、兄の介入を止めようとした。

「うさんくさいだ!? お前がメシを食えるのは、その仕事さまのおかげだろうが!」

 だが、既にすっかり、話はややこしくなっている。

「幽霊退治の仕事の、どこがうさんくさくないってんだ!」

「バカ野郎! いつも言ってるだろうが! 『ゴーストバスター』と呼べ!」

 またも、論点はズレ続けていくのだ。
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