毎日がカレー曜日
 01理論を実践で使えるように作られたソフト──それを開発したのが、孝輔だったのだ。

 営業力&パフォーマンス力を持つ直樹と、技術力を持つ孝輔が組み合わさって初めて、この事務所は成り立っているのである。

「何を見てるのですか?」

 突然後ろから声をかけられて、更に絆創膏の増えた孝輔はびっくりした。

「あ、ああ、この前の仕事の解析報告書…」

 ノートパソコンのディスプレイの中で、複雑な色の点がうごめいている。

「まるで万華鏡みたいですね…これは何ですか?」

 点滅する画面を指す。

 その褐色の指。

 兄の仕事の都合で、長い間インドで生活をしていたらしい。帰国したのは、つい先日ということだ。

 その指先でうごめく色。

「それが、この件のユーレイさ」

 さすがは、身内に同業者がいるだけのことはある。

 霊の存在に、驚いたり怖がったりする様子はなかった。

 ただ。

「これが……そうなのですか?」

 信じられない顔はしていたが。

「そ。もっとそれっぽいフィルターをかけることは出来るけど、これが一番分かりやすいんでね」

 あんまり具体的なフィルターをかけると、依頼者が気持ち悪がるのだ。

 サーモグラフィみたいな数学的な画面のほうが、感情抜きで処理できる。

「そう、ですか」

 その指は。

 引かれるどころか、そのままディスプレイに押し当てられた。

 霊の輪郭をなぞるように、褐色の指先が動く。

「これはもう……霊ではないのですね」

 何故、その声には物寂しいものが含まれているのか。
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