毎日がカレー曜日
「霊と言えば霊……ただのデータと言えばそう」

 孝輔は、まるで悪いことをしているかのような気分になった。

 野生動物を、檻の中に無理やり閉じ込めているかのように。

 そういえば、彼女の兄は直樹とはまったく違う方式を取っている。

 ついさっき孝輔は、ネットでヤイバの存在を、その筋のルートで検索していた。

 吉祥寺ヤイバ。

 万物に宿る精霊の力を借りて、霊を鎮めさせる者。

 霊能力のランクは資料によると、かなり上位に位置していた。

 削除するなんて乱暴なやり方をする直樹とは違い、ヤイバは万物を自然な流れに戻すやり方で、魂を浄化し──云々。

 後は、孝輔もよく分からない小難しい文章が続いていた。

 長い間、インドで修行していたのも、おそらくその能力を高めるためなのだろう。

 何故かインドで修行と言われると、海よりも深く納得してしまう彼だった。

 とにかくまあ、ヤイバは直樹とは方向も考え方も、何もかも違うのだ。

「データ…」

 指が。

 ゆっくりとディスプレイから離れていく。

「お仕事の邪魔してごめんなさい」

 にこ。

 その笑顔には。

 雲がかかっていた。
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