夏草の香りが漂う丘〜風が運んだ過去(トキ)〜[ナツコイ企画]
「あの事はいいって…。かえって迷惑をかけてごめんな。」

自分は優しく言った。
それに対して大沢さんは、

「なんで、矢口さんが謝るんですか…。矢口さんは…。」

と、不満そうだ。

「だって、真垣も辞めただろ?一人にさせて…申し訳なかったな。」

「まさか…、それで退院を早めたんですか?」

大沢さんがこちらを向く。

「こらっ、前を見て…前を…。」

自分の声に、大沢さんは前を向いた。
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