夏草の香りが漂う丘〜風が運んだ過去(トキ)〜[ナツコイ企画]
「ある…だろ…?」

矢口はトーンダウンしていく。

「ま、いいよ…。そういう事にしておいてあげる。可哀相だから。」

中林は、水田の方に視線を変えた。

そして、暫く頭上のセミの合唱を耳にしていた。

「あっ、風が来るよ。」

中林は、稲の葉が裏返る波を見つけた。

そうして、風は二人を包み、吹き抜けた。
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