それぞれの場合
「詩乃ー」
「んにゃ…?」
気がつけば太陽は南を通り
腹はぐうと音をたてる
俺を起こしたのは
友達の3年生、白井だ。
「起こさなくても
良かったのに」
枕に顔を埋めて鳴り止まない腹が
訳を白井に説明した
「なに詩乃って弁当ないの?」
「母さんが居ねーんだよ」
「これやるよ」
差し出されたのは、おにぎり
「オレは部活でいっぱい飯買ったから
ちょっとぐらいは
寄付できるぞー」
「さんきゅ、」
食べながらポンと頭に浮かんだこと
…本当なら、白井と俺は今頃
同じ青のネクタイをする
3年生だったんだよな
教師の言葉がチクリ、またチクリと
突き刺さる。