それぞれの場合
朝6時起床
「なんだ、今日はやけに早起きだな
弁当まで作って…」
リビング机に新聞紙を置いて
ネクタイを絞める親父
「おはようぐらい言えば?」
「ああ…おはよう」
「おはよう。今日も母さん居ないんだな
昨日電話きたよ」
「知ってるよ。俺はもう仕事いくからな」
リビングを出ようとする
親父を引き留めた
「親父!」
「なんだ…」
「親父は俺のこと
諦めてんのかも知れない
期待外れって思ってんのかも知れない
でも俺、もう諦めねーよ」
強く心に誓った。
俺はもう…逃げたりしない
黙り込んだ親父が
やっと返事をした。
「……親が子供を
見捨てるわけないだろ…」
「えっ」
「頑張れよ。詩乃。」
「おう!行ってらっしゃい!」
「行ってきます」
パタン…―
久々に聞いた親父の声で
呼ばれる名前…
なんだか誇らしかった。