大学生、それぞれの恋愛
「香耶…」
香耶はついに泣き出してしまった。
小さな手で一生懸命目から溢れ出す涙を受け止めている。
「太一、嘘言わないでよ。
だってあのとき、私じゃない、好きな人がいるってそう言ったよね。
あのときからずっと…」
ずっと…の後の言葉を香耶は詰まらせながら、俺を見つめた。
俺は香耶のこの表情に弱い。
涙目のときは特に。
身長差から香耶が俺を見るときは意識しなくても上目遣いになる。そのときに目をキラキラさせて見つめる香耶のこの表情…俺は好きだった。
だから、無意識に俺は香耶を抱きしめていた。
駄目だよ、なんて香耶は辛そうに抵抗してみせたけど、抱きしめる力を強めれば香耶はおとなしく俺の腕の中に収まった。