Memory
『糸雨ちゃん?』
「…あ…ごめんなさい。考え事してて…」
思いの外思考にふけっていたらしい。
『良かった』と憐さんの心配したような声が電話越しに聞こえる。
「私に手伝える事件はありますか?」
『その時は頼むから。糸雨ちゃんは高校生でしょ。高校生は勉学に勤しみなさい』
急に先生みたいな話し方をする憐さんが面白くて少し笑ってしまう。
『糸雨ちゃん…糸雨ちゃんは笑っている時が一番可愛いよ。勿論、どんな表情の糸雨ちゃんも可愛いけどね』
「憐さん…お世辞でも嬉しいです。ありがとう…」
そんなこんなで20分程話しをして電話を切った。
携帯を片手に握りしめ、青空を見上げる。
先程感じていた胸の痛みはいつの間にか消えていた。