Memory
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「…夕方…」
いつから空が赤くなってたんだろう。
気付いたら夕日に照らされ屋上に一人きりだった。
「…ねぇ…何処にいるの?」
夕暮れに染まる家々を眺めながらポツリと呟く。
この町の何処かに…あなたはいるの?
私と同じ力を持つ彼女…
彼女に会いたい。
風が私の髪を優しく梳く。昼間は夏休み前だけあって蒸し暑い。
だから風が心地良かった。
「…早く…会いたい…」
「誰に?」
私の呟きに誰かが答えた。ゆっくりと後ろを振り返ると、そこにはあの焦げ茶色の髪の彼がいた。
「……何でアンタが…」
「そらぁ同じ学校だから♪
そんでもって…」
夏は私に傘を渡した。
あの時に押し付けた傘だ…
「傘くらいそんな律儀に返してくれなくてもいいのに…」
「借りたもんは返す!!
礼儀礼儀!!」
あんな別れ方したのに夏は笑顔で話しかけてくる。
どうして…?
私が疎ましくないの…?
「…拒絶してるのに…何で関わろうとするの?」
何で…笑顔を向けるの?
どうしてこの人は…離れていかないの…?
「…拒絶?
拒絶してたのか!?
俺、拒絶されてたのか!?」
「…………………は?」
そう叫んだ夏はショックを受けたのか、青い顔をしている。
………今更……?
今更なの??
「…もう…何なのこの人…」
疲れる…理解に苦しい。
出来るだけ関わらないようにしなきゃ…
「……………………」
無言で背を向けて夏の前から立ち去ろうとすると、夏が慌てて私に手を伸ばしたのが見えた。