Memory
「っ!?触らないで!!!」
悲鳴に近い声を上げ、私は夏から距離を取る。
自分の体を抱きしめ、震えを必死に押さえる。
そんな私を夏は驚いたように見つめていた。
「…っ………はぁっ…」
落ち着け…落ち着け、落ち着け。大丈夫…もう大丈夫…
ゆっくり呼吸を繰り返すうちに震えも治まる。
意識していないと…見えてしまう。不意に触れてしまえば、隠したい過去や辛い記憶…他人が踏み入れてはならないモノに触れてしまう。
「おい…大丈夫か……?」
心配そうに近付いてくる夏に向かって私は首を横に振る。
「お願い…それ以上近付かないで…お願い…」
最後は消え入りそうな声で夏に届いたかは分からない。
でも、夏はそこから動かず立ち止まった。