Memory


「…何処かへ…行って。
もう私に関わらないで…」


これ以上の胸の痛みに耐えられる自信が無い。


「何言ってんだ!!
そんな状態の字祢を置いて行ける分けねぇよ!!」


そう言って夏はドカッとその場に胡座をかいて座った。


「…夏……?」


座り込んだ夏を不思議そうに見ていると、夏は小さく笑った。


「これくらいの距離なら大丈夫か?」


私は驚きで目を見開く。
今、私に全力で拒絶されたのに…


「どうして……?
離れていかないの…?」


ヘナヘナと座り込み夏を見つめる。


「字祢 糸雨っていう隣のクラスの女の子と友達になりたいから…じゃ駄目?」


夏は名前にあった夏の日差しのように眩しい笑みを浮かべる。


「…そんなの……」



私の目から大粒の涙が溢れ出し、視界が歪む。


「私の事…あなたは何も知らないから…そんな事言えるんだよ…」


私の力の事…あなたが知ったら……


「何も知らない…だから字祢の事教えてくれよ。少しずつでいいから…」


近付く事なく、離れる事なく…
夏は私の側にいる。



でも…
私が話したら…夏は離れて行くんだ…


言えない…言えないよ…







< 22 / 56 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop