Memory
「…何処かへ…行って。
もう私に関わらないで…」
これ以上の胸の痛みに耐えられる自信が無い。
「何言ってんだ!!
そんな状態の字祢を置いて行ける分けねぇよ!!」
そう言って夏はドカッとその場に胡座をかいて座った。
「…夏……?」
座り込んだ夏を不思議そうに見ていると、夏は小さく笑った。
「これくらいの距離なら大丈夫か?」
私は驚きで目を見開く。
今、私に全力で拒絶されたのに…
「どうして……?
離れていかないの…?」
ヘナヘナと座り込み夏を見つめる。
「字祢 糸雨っていう隣のクラスの女の子と友達になりたいから…じゃ駄目?」
夏は名前にあった夏の日差しのように眩しい笑みを浮かべる。
「…そんなの……」
私の目から大粒の涙が溢れ出し、視界が歪む。
「私の事…あなたは何も知らないから…そんな事言えるんだよ…」
私の力の事…あなたが知ったら……
「何も知らない…だから字祢の事教えてくれよ。少しずつでいいから…」
近付く事なく、離れる事なく…
夏は私の側にいる。
でも…
私が話したら…夏は離れて行くんだ…
言えない…言えないよ…