Memory
「あなたにも見えるのね…記憶が…残留した思念達が…」
彼女の言葉の意味を女の子が理解するには難しすぎた。
「あなたと私は同じ…
同じ…異質の力を持ってる。この先、あなたは沢山沢山傷ついて…涙を流すんだ…」
それはまるで呪文のように頭の中で繰り返される。
「それでも…
今までの孤独があなたと出会う為だったとしたら…」
彼女はふわっと笑みを浮かべ女の子の頬を両手で挟んだ。
「もう私は孤独じゃない…
あなたも…一人じゃない。この日本中…ううん、世界中の人間があなたを忌み嫌い、虐げたとしても私は…私だけはあなたの味方よ」
彼女のお下げが女の子の頬をくすぐる。
それをうっとうしいとは思わなかった。
彼女の温もりは女の子にとって初めて慈愛を感じた瞬間だったからだ。
その女の子は私…
私が幼い頃にあった出来事の一部、記憶の断片。
いつも彼女の顔はぼやけている。間近で見たはずの彼女の顔が思い出せない。
いつもこの繰り返しで私は意識を手放す。
この世界で唯一愛した彼女を想って…