Memory


―――――――――――
―――――――――
―――――――


「ご苦労様だったね、二人共」


仕事を終えた私達に憐さんは缶ジュースを渡した。


佐々木 舞衣さんは無事に見つかり、家族に保護された。


記憶を辿った通り、彼女は既に暴行を受けた後で酷く衰弱しきっていた。


所詮、私の力は辿るだけ。未来を見る力は無い。


「…りんごジュース…
ありがとうございます、憐さん」


私は弱々しい笑みを憐さんに向けた。


貰ったりんごジュースを大切に抱きしめる。


りんごジュースは私の一番好きな飲み物。


憐さんは仕事終わりに必ずりんごジュースを買ってくれる。


それがすごく嬉しかった。口にしたりんごジュースが乾いた傷だらけの心に染み渡る。


「…ありがとうございます」


隣で缶ジュースを受け取る夏の顔は暗い。


恐らく…早く此処から逃げ出したいのだろう。


私という存在から離れたい、そうに違いない。


「お疲れ様。
随分暗い顔をしてるんだね。分かったでしょ…私に関わるとろくな事がないの。これに懲りたら……」

「俺決めた!!」


"私に関わるのは止めて"と言おうとしたのに遮られる。









< 44 / 56 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop