Memory
「字祢の傍にいる。
字祢の力の事…まだ良く分からないけど、知りたい。今日一緒にいてそう思ったから」
夏は迷いの無い瞳で私を見つめる。
そんな彼の瞳を受け止めきれずに俯く。
「分からない…本当に」
夏という存在が、言動が理解出来ない。
どうして私から離れて行かないの?
どうして…歩み寄ろうとするの?
「迷惑だって…言ってるのに…空気…読んでよ」
動揺している自分がいる。ほとんど無意識に悪態をついた。
「俺、空気読めない奴だから!字祢から離れない。これからも傍にいる」
夏はニッと笑う。
その笑顔が眩しい。
太陽みたいな人……
彼一人の存在がその場を、世界を明るく照らしそうな程眩しい光のよう…
そんな彼を私は直視出来ずに俯いた。
私は…彼とは真反対だ。
暗く閉ざされた存在。
私の存在一つが周りを脅かし、恐れさせる。
決して相いれる事は無いのだと思う。
情が生まれる前に……
「もう二度と…私に近づかないで」
これが私が決めた答え。
最善の方法…
夏の言葉を聞かずに私は彼に背を向けた。
これで終わりなのだと、痛む胸に気付かないふりをして…