嘆きの天使-ジュニアイドル葵の事情-


カメラに向かって
自己紹介をした後、

カメラマンの指示で

ポーズを取りながら、
動いていく。



2回目になると、
前回よりは
スムーズに動けるから不思議だった。



一旦、カメラが止まり、
緒川さんから指示が入る。



「セーターをギリギリのところで、
捲り上げたり、
下げたり出来るかな??

顔は隠れないようにね

……ちょっとやってみて」



私は少しだけ、
セーターを捲り上げた。



「もっと、捲くって!!

そうそう。

顔は隠れないようにね。

もう少し

……もうちょい!!」



緒川さんの声と共に、
セーターを捲り上げる。



お腹が見え、

胸が少し見え……

あと少しで乳首が見えるだろうところで

「ストップ!」と声がかかった。



「じゃ、色っぽい目で
カメラを見ながら、
そこまで捲り上げてくれる??

それを3回やろうか??」



戸惑う私をお構いなしに、
撮影は進行していく。


言われたまま、
カメラのレンズを見つめながら
セーターを捲り上げた。



「ちょっと待って!!

……葵ちゃん、
好きな男の子はいるかな?

その彼を想像しながら、
捲り上げてみてくれる??」


えええ??

好きな男の子??



頭の中に浮かんだのは、
友井くんだった。



いつも優しく声で、
私のことを気にかけてくれる……

友井くん。



でも友井くんを考えながら、

セーターを捲り上げるなんて、

考えただけで恥ずかしい。


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