嘆きの天使-ジュニアイドル葵の事情-
ピンポーン。
直子さんが
私の家のインターフォンを押した。
繋いだ健太の手に力が入る。
「はぁ?」
ドアが開き、
眠気眼のお父さんが顔を覗かせた。
「和樹さん?ちょっと良い?
葵ちゃんたちのこと何だけど……」
お父さんは視線を落とし、
怯える私たちを直視する。
「……あぁ。入れ」
素っ気ない声に、
私たちの鼓動が早まった。
……怒っているのだろうか。
また……
暴力を振るわれるかも。
そんな疑問に足を進めることが出来ずにいると、
直子さんが
「大丈夫だから」と背中を押した。
玄関に入ると、
床に落としたスーパーの袋が
そのままになっていた。
茶の間のテーブルの上には、
タバコの吸い殻が
山になった灰皿があり、
先ほどの恐怖が蘇った。
直子さんから
「部屋に行ってなさい」と告げられ、
私たちは自分たちの部屋に向かった。