嘆きの天使-ジュニアイドル葵の事情-
新たな事実
薄く曇っている窓ガラスに、
指でニコちゃんマークを書いた。
今日はクラスで一番に登校して、
紗希を待っていた。
昨日買ったお土産を早く渡したくて、
落ち着かなかったからだ
誰もいない殺風景な教室に
これから40人の生徒がやってくる。
この教室で
私が軽井沢の山奥で
裸になったことを知る人はいない。
そんなことを思わせる
静寂した空間だった。
教室に生徒が半分ぐらい登校した頃、
マフラーをグルグルと巻いた紗希が入って来た。
私は駆け足で近付き、紙袋を差し出した。
「おはよう!!これお土産!!」
紗希は目が点になりながら、
「あ、ありがとう」と受け取った。
「お土産ってどこに行ってきたの?」
「軽井沢に行ってきたんだ。
紗希の言う通り、素敵なところだった♪」
そして「中を見て」と催促すると、
紗希は包装紙を剥がし、
箱に入っているオルゴールを取り出した。
ガラスで出来た家の形をした
オルゴールに
「綺麗!!」と声を漏らす。