嘆きの天使-ジュニアイドル葵の事情-

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人気のない
旧校舎の踊り場は

グランドでサッカーをやっている男子の声が

かすかに聞こえるだけだった。



私と紗希は
静かな階段に腰を下ろし、

「さっきの話だけど……」と口を開いた。



きっと分かってくれる。


そう信じて、

私はお父さんに20万で売られたこと。


裸に近い写真を撮られたこと。


それが雑誌に載ったこと。


DVDで発売されていること。



そして
2本目のDVDの撮影で

軽井沢に行ったこと。


全てを話した。



紗希は黙って話を聞いていた。



そして送られて来た雑誌を
コンビニのゴミ箱に捨てたことも

すべてを話した。



私もいけないことしたと思っている。


でも仕方なかった。


お父さんがお金をもらっている以上、

嫌がったら健太に危害が加わる可能性がある。


だから仕方なかったんだ。



だんだん胸が締め付けられ、

息が吸うのもやっとだった。



「……葵?」



紗希が私の肩を抱いた。


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