嘆きの天使-ジュニアイドル葵の事情-
「話、聞いたよ。
どうして、そんなことしたの??」
直子さんは問いかけに、
お父さん何も答えず黙っていた。
ふすま一枚で仕切られた部屋は
何となく
2人の会話が聞こえた。
お父さんも
お母さんが出て行ってから、
私たちを育てるために、
必死に働いていた。
きっと辛かったのだろう。
……お母さんはどうして、私たちを捨てたの?
私と健太のこと、可愛いと思わなかったの??
会いたいとは言わないから、
捨てた理由を教えてほしい……。
ふすまがサッと開き、
穏やかな顔をした直子さんが顔を覗かせた。
「もう大丈夫。
お父さんも、もうしないって。
安心しなさい」
顔を合わせる私と健太は
半信半疑で、
茶の間でタバコに火をつけるお父さんに近づいた。
フ~っと白い煙を吐いた後、
私たちに視線を向け、
「健太、ごめんな」と言うお父さんがいた。
昔、よく見た優しい顔だった。
良かった……。
これで良かったんだ……。
そう胸を撫で下ろした。
でも……本当は違った。
これからが地獄の始まりだった。