嘆きの天使-ジュニアイドル葵の事情-
第①章
虐待
乾いた春風が頬を撫でた。
紺色のブレザーと
臙脂色(エンジイロ)のネクタイ、
スカートを三つ折りして、
丈を短くする。
中学二年生になった私は
眉毛を整えることも
化粧をすることもなく、
クラスメイトが持って来た
ファッションの雑誌を
横目で、
「良いな」と
小さく呟くだけだった。
そんな私は
HRが終わると
誰よりも早く教室を出る。
目指すは
商店街から大きな通りに出てところにある
格安スーパーだ。
毎日、
ここに来ることが日課になっていた。
トドのような体型の
中年女性に交じり、
食材を物色する。
あ、今日は玉ねぎが詰め放題だ!と
同年代の女の子が
アクセサリーを漁るように、
玉ねぎを手に取ると
半透明のビニール袋へ詰めて行く。
特価品の豚肉やニンジンをカゴの中へ入れ、
レジに進む。