嘆きの天使-ジュニアイドル葵の事情-
「あ、小阪??」
背後から
私を呼ぶ声が聞こえた。
「……あっ、友井くん」
振り返ると、
同じクラスの友井健人の姿があった。
友井くんは
成績が学年トップで、
フットサル部に所属し、
二年生のキャプテンにやっている
みんなのリーダー的存在だった。
そんな友井くんが
私を不思議そうに見ていたのだ。
「どうしたの?買い物?」
「……え?あぁ、うん……。買い物……」
ガラスに映る自分の姿を確認すると、
走ったせいで
額には汗が流れている。
「何かあったのか?
家を飛び出してきたように見えるけど……」
友井くんは
何か察したように問いかけた。
「う、うん……。
お父さんと喧嘩しちゃって」
「そっかぁ……。
今、塾の帰りなんだ。
……な?
缶コーヒーでも買って、
そこの公園で話さないか?」
「え?
……あぁ、ダメ。
私、お財布持って来てないし……」
「そんなこと気にするなよ。
俺が奢るから!」
そう言って、
友井くんは財布を取り出し、
コンビニの自動販売機に小銭を入れた。
「どれが良い??」と
尋ねる友井くんに、
「じゃ、これ……」と、
遠慮がちにボタンを押した。