嘆きの天使-ジュニアイドル葵の事情-
鈍い音と共に
缶コーヒーが落ちてくる。
友井くんは
その缶コーヒーを取り出すと、
「はい!」差し出した。
「ありがとう……。
あ、温かい……」
ホットの缶コーヒーを握ると、
逃避した気持ちが
じんわりと
包まれるような感覚があった。
友井くんも
同じ缶コーヒーを手にすると、
私たちは
公園の街灯下のある
ベンチに腰を下ろした。
昼間は
たくさんの人で賑わっているのに、
夜になると
ウソのようにシーンとする。
缶コーヒーのプラグを開けると
中から苦味のある
甘さが漂った。
「……友井くん、ありがとう」
「気にするなって。
小阪が心配だったから……」
友井くんとは、
挨拶ぐらいで話したことがなかった。
耳にする友井くんの話題は
どれも良い話で、
私とは住む世界が違う人というイメージだった。
そんな友井くんが私を心配してくれるの?