嘆きの天使-ジュニアイドル葵の事情-


「小阪って、親とよく喧嘩するの??」



「ううん。たまに……。

うち、お母さんがいないから、

私が家のことをやってるんだ」



「あぁ。何となく話は聞いていたよ」



私のこと噂になってるのかな。

良い話は聞いていないだろうな。



「お母さんはどうしたの?」



「私が小さいときに出て行って、

それからうちは3人暮らし」



「そっか。大変だな」



「友井くんも
フットサル部のキャプテンやったり、

塾に行ったり……

大変そう」



「俺は好きでやってから大変じゃないよ。

……まぁ塾は親に言われてだけど!」



そう言って顔を見合すと、

私たちは小さく微笑んだ。



何だか、
辛い気持ちが吹き飛んで行くようだ。



友井くんはみんなから信頼され、
愛されている。


こんな私にも優しくしてくれるなんて。



コーヒーを飲み終えると、

私たちは公園を後にした。



自分のことを
こんなに話したのは……

いつ振りだろう。



友井くんとは
また色んなことを話したいと思いなら、
家路を進んだ。



家に着くと、
お父さんは既に寝てしまったのか、

茶の間に
小さな豆電球が灯されていた。



部屋のふすまを開けると、

布団の上で
横になっている健太が

「お姉ちゃん!」と声を上げた。



「健太、起きてたの?

お父さんは大丈夫だった??」



「うん。怒ってなかったよ。

もう寝ちゃった」



「そっか……。良かった」



台所へ行くと、
食器が綺麗に洗われていた。


健太が洗ってくれたのだろう。


私は綺麗に片づけられたシンクを見つめ、

小さく溜め息をついた。


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