嘆きの天使-ジュニアイドル葵の事情-
U-15
約束の土曜日。
お父さんと電車を乗り継ぎ、
新宿へやってきた。
空を見上げると、
大きなビルが立ち並び、
せっかくの青空が狭く感じた。
その押し潰されそうな感覚が、
今の私のように感じた。
お父さんとは家を出てから、
一言も口を利いていない。
電車の中でも、
眉間にシワを寄せ、
黙ったまま下を向いていた。
駅から少し離れた
雑居ビルにたどり着くと、
指がプルプルと震え出し、
足がすくんでしまった。
「おい、早く来い」
小さなエレベーターに乗り込んだお父さんが、
立ち尽す私に声をかけた。
カツカツと靴のつま先を
エレベーターの中で、
ぶつけるお父さんは確実にイラついている。
「葵!!
何やってるんだ!!
早く乗れ!」
怒鳴り声が上がった。
狭い空間に木霊する声に、
私は一歩踏み込み、
エレベーターの中に足を進めた。
ウイーンと
動き出すエレベーターと共に、
心臓がはち切れるほどの緊張が走る。