嘆きの天使-ジュニアイドル葵の事情-
「葵ちゃん、今日も御苦労さま」
レジ打ちをしているのは
同じ団地に住む工藤さん。
目尻を垂らし、
「今日はカレーでも作るの?」と尋ねた。
「えぇ、まぁ」
愛想笑いを浮かべ、
当たり障りのない返事を交わす。
購入した食材を
雑誌の付録についていた
エコバックに詰め込み、
スーパーを後にした。
これが毎日の生活パターン。
カサカサと
エコバックを揺らしながら、
寂れた街を歩く。
ここは下町でも住宅街でもない。
真新しいものも無く、
薄暗い
治安の悪い街なのだ。
この街で
生まれ育った私に
「将来なりたいものは?」と質問した大人がいた。
即行で
「そんなもの無い」と答えた。
そして
付け加えるように
「だって、
今、生きて行くだけで精いっぱいだから」と答えた。
私は5月に
14歳の誕生日を迎えた。