嘆きの天使-ジュニアイドル葵の事情-


「小阪さん?

葵ちゃんには
無理じゃないでしょうか?

本人が嫌がっていると、

現場で揉めるだけなんですよ」



諦めた口ぶりで問いかける緒川さんに、

「やらせますので……」と
深々と頭を下げるお父さんに、

胸が締め付けられた。



お父さんはどんな思いで、

頭を下げているのだろうか。



私があんな姿で写真を撮られても

平気なのだろうか?



……でも私がやらなかったら、

お父さんはどうなってしまうのだろう。



「葵ちゃん?

さっき女の子たちは
女優やモデルになりたい子がやっているんだ。

中には事情があって
やっている子もいるかもしれない。

だけど、
やる気がない子はいない」



緒川さんはお父さんに

「もう一度、相談してください」と言葉をかけた。



私たちは事務所を出ると、

無言のまま駅へ向かった。



路上で友達同士で歩いている同年代の女の子とすれ違う。



普通の女の子が
こんなのことで悩むだろうか。


借金のために裸になるなんて……。


私がやるって言わなかったから、

お父さんはどうなるの?


また健太に、
タバコを押し付けたりするの??

……お父さん。


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