嘆きの天使-ジュニアイドル葵の事情-
「葵ちゃん、
眉毛やウブ毛もカットしようね」
原田さんはそう言うと、
私に顔にシェイバーを走らせる。
黙って目を瞑り、すべてを任せた。
どうなるのか分からない。
今日の私は人形になのだ……。
「はい!!出来たよ!!!」
原田さんの声が聞こえ、
ゆっくりと瞼を開ける。
柔らかな照明と共に、
鏡に映る自分が目に入った。
………え?これが私??
そこには見たことも無い自分の姿が映っていた。
ウブ毛なんて
剃ったこともないし、
化粧もしたことない。
髪だっていつも1本に縛るだけ。
そんな私が別人のように変わっていた。
「葵ちゃんは
品の良い顔立ちしているから、
大人ぽいメイクをすると際立つわ」
後ろで納得したように言う原田さん。
「ちょっと待ってね!!
……緒川さん!
メイク終わりましたよ!!
どの衣装から、行きますか??」
階段下に向かって叫ぶ原田さんの声が
家中に響く。
「は~い!!今、行きます!!」
緒川さんの声が聞こえ、
一気に現実に引き戻される。
私はここへ仕事で来たのだ。
1回だけの仕事のために。