嘆きの天使-ジュニアイドル葵の事情-


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「おおお!!良いじゃん!!!」



声を揃える大人たちに

私の顔はカッと熱くなり、

逃げ出したいくらい恥ずかしくなった。



「葵ちゃん、細いねぇ。

羨ましい!!お母さんも細いの??」



原田さんが私のセーラーを整えながら問いかけた。



「……私、お母さんの顔、忘れちゃったんです」



「え?そうなの?

ごめんね。変なこと訊いて……」



「ううん」と、
うつむいたまま、首を振った。



お母さんが居たら、

こうやって制服を直してくれたり、

髪を縛ってくれたりするのかな……。



「はい!!OK!!」と
肩をポンと叩く原田さんに、

小さく頷いた。



「じゃ……葵ちゃん、

あそこのベッドに座ってくれる??」



緒川さんは照明が当てられたベッドに指を示した。



「……はい」


「ほら、そんな緊張しないで!」



背中を軽く押されると、

震えていた脚が縺(もつ)れ、

その場にしゃがみ込んでしまった。



「大丈夫?!」



原田さんが駆け寄り、心配そうに肩を支えた。



「ちょっと……、

この子、無理なんじゃない?

凄く震えてる……」



私の肩を両手で抱えながら、

緒川さんに訴えるように言った。


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