嘆きの天使-ジュニアイドル葵の事情-
「んん…」と
唸るような声を出す緒川さんは、
じっと私のことを見つめた。
更にガクガクと震え出し、
息もうまく吸えない。
支えられていることで、
自分を保っている……
そんんな状態だった。
「とりあえず二階に連れてって。
葵ちゃんのお父さんに電話して、
どうするか、
決めてもらうから」
えっ??お父さんに?!
緒川さんの言葉に私は顔を上げた。
お父さんと約束をしたんだ。
1回だけ我慢するって。
約束を守れば、
お父さんも真面目に働いてくれるはず。
健太にも優しくするはず。
そしてまた昔のお父さんに戻ってくれるかもしれない。
……でも私が約束を守らなければ、
家族は変わらない。
ケータイを持ち、
電話をかけようとする緒川さんに、
「……ちょっと、待ってください!!」と
搾り出すように、声を上げた。
「どうしたの?」
「私、やります。
大丈夫です。
お父さんに電話しないでください」
か細い声が、部屋に響く。
肩を抱える原田さんが、
「ホント?
こういうのは無理してやるものじゃないよ」と
心配そうに見つめる。