嘆きの天使-ジュニアイドル葵の事情-


「今、階段にセットを作っているから、

ちょっと待ってね」



原田さんは
私の髪を直しながら、事務的に言った。



「……原田さん、
ここって緒川さんの家なんですか??」



「ここはハウススタジオよ。
撮影で使うような場所ね。

初めて来たからビックリしたでしょ」



「はい。何もかもが初めてで」



「葵ちゃんは
丹精な顔立ちしてるから、

大人になったら綺麗になるわ!

今も十分、可愛いけどね!」



鏡越しに微笑む原田さん。



「用意出来たよ!!!降りてきて!!」



1階から緒川さんの声が聞こえ、
私たちはドアを開けた。



セットされた照明器具の間を縫うように降りていく。



「葵ちゃんの髪をアップに出来る?」と
緒川さんは、

厳しい顔をしながら現場を仕切っていた。



髪をアップにセットしてもらい、

またカメラマンの指示通り、
動いていく。



階段に腰を下ろし、

腕を上げたり、

手で胸を寄せたり……。


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