嘆きの天使-ジュニアイドル葵の事情-
「葵ちゃん、今日はご苦労さま。
これからご飯でも食べに行こうか??」
「いえ……
家に帰って、
ご飯作らないといけないので」
「そっか。
じゃまた後日連絡するよ。
お父さんに宜しく伝えてね」
緒川さんに
新宿の駅前まで送ってもらい、
走り出す車に軽く頭を下げた。
今日も新宿駅は、人が混み合っている。
既に太陽は沈み、
これから遊びに繰り出そうとする若者で溢れていた。
その中に、
色あせたトレーナーとジーンズを穿いた私がいる。
「はぁぁ」
今日は何回目ため息をついただろう。
ため息の数だけ
幸せが逃げるなら、
どれだけ逃げたか分からない。
空を見上げると、
太陽も月もない……
夕暮れの狭い空があった。
……私、これで良かったのかな??
中学生があんな格好で、
ビデオに撮られて良かったのだろうか。
“罪悪感”が込み上げ、
また目頭が熱くなった。
今日のことは誰にも言えない。
知られてはいけないんだ。
神様、誰にもバレませんように……。
私は空に願うしかなかった。