嘆きの天使-ジュニアイドル葵の事情-


「葵ちゃん、今日はご苦労さま。

これからご飯でも食べに行こうか??」



「いえ……

家に帰って、
ご飯作らないといけないので」



「そっか。
じゃまた後日連絡するよ。

お父さんに宜しく伝えてね」



緒川さんに
新宿の駅前まで送ってもらい、

走り出す車に軽く頭を下げた。



今日も新宿駅は、人が混み合っている。



既に太陽は沈み、

これから遊びに繰り出そうとする若者で溢れていた。


その中に、
色あせたトレーナーとジーンズを穿いた私がいる。



「はぁぁ」



今日は何回目ため息をついただろう。



ため息の数だけ
幸せが逃げるなら、

どれだけ逃げたか分からない。



空を見上げると、

太陽も月もない……

夕暮れの狭い空があった。



……私、これで良かったのかな??



中学生があんな格好で、

ビデオに撮られて良かったのだろうか。



“罪悪感”が込み上げ、

また目頭が熱くなった。



今日のことは誰にも言えない。


知られてはいけないんだ。



神様、誰にもバレませんように……。



私は空に願うしかなかった。


< 47 / 120 >

この作品をシェア

pagetop