嘆きの天使-ジュニアイドル葵の事情-
「「ナイシュー!!」」
シュートを決めたのは
友井くんだった。
後輩の声がコートに響き、
周りの女の子も
微笑ましい表情を浮かべた。
光沢のある
白のユニフォームに身を包み、
華麗な動きで
シュート決めた友井くん。
「友井くん、
やっぱカッコ良いね!!
人気があるのも分かる!!」
「うん……。そうだね」
好きな人の活躍を眺めながら、
優しい気持ちになる。
これが普通の女の子なんだろうな。
友井くんともっと話をしてみたい。
もっと近い存在になりたい。
……でもそんなこと私が望んじゃいけない。
生き方も生活もすべて違う。
それに私は……。
その時、
チラッと友井くんが
こちらに振り向き、
思いっきり視線がぶつかった。
あっ!!!!
友井くんは
私と目があったことで
「よっ!」と
右手を上げようとしたが、
私はすぐに視線を逸らした。
……友井くん、ごめんなさい。
私が見ちゃいけないよね。
ごめんなさい。
嬉しさとは
真逆の感情が込み上げ、
私はカバンを抱えると、
逃げるように走り出した。