嘆きの天使-ジュニアイドル葵の事情-


俺が姉ちゃんに
事情を確認しようと

すぐに立ち上がり、

外へ飛び出した。



まだ遠くには行っていないはず。


駅に向かって走って行くと、

橋の傍で
ダランと肩を落とし、

今にも
転びそうな足どりで歩く
姉ちゃんを発見した。



ミニスカートに
高いヒールのサンダルを履き、

手には高そうなブランドバッグ。



一瞬で姉ちゃんだと分かった。



「姉ちゃん!!!」



体をビクッとさせ、

首だけがゆっくりと振り返った。



真っ赤に腫れた目の姉ちゃんは、

化粧が剥がれ、
幼い顔をしている。



姉ちゃんは俺の顔を見ると、
また歩き出した。



「おい!?ちょっと待てって!!」



歩いている姉ちゃんの腕を掴むと、

ブルンと振り払われた。



「大介もアタシのこと

バカだと思ってるんでしょ?!」



髪を振り乱し、
涙声で叫ぶ姉ちゃんは

その場にしゃがみ込んだ。


「バカだと思ってるよ!!
何で借金なんかしたんだよ!

母さんが金あるわけないだろう!」



「分かってる…

分かってるけど…、

今、払わないと……」



しゃがみ込んで顔を伏せてしまう姉ちゃん。



姉ちゃんも何か事情があったのだろう。


< 57 / 120 >

この作品をシェア

pagetop