嘆きの天使-ジュニアイドル葵の事情-


俺にとって、
姉ちゃんは自慢だった。


モデルのような容姿に

友達はみんな姉ちゃんを見て、
羨ましがった。


先輩からも、
姉ちゃんの弟というだけで

可愛がってもらった。



流行にも敏感な姉ちゃんは、

オシャレもたくさん教えてくれた。



そんな姉ちゃんが

こんなことになるなんて……。



俺は姉ちゃんの肩を支えながら、

駅前にあるファーストフードに入った。



冷え切った体を温めるために
ホットコーヒーを2つ購入し、

伏せている姉ちゃんに一つ渡した。



「姉ちゃん、飲めよ」



「……うん」



髪で顔を隠しながら、

コーヒーを啜(すす)る姉ちゃん。



優しくて、

美人な姉ちゃんが

どうしてこんなに変わったんだ?



金は人を変えてしまう。


金がないと、
生きていけない。


でもこんな姉ちゃんを見たくなかった。



ブランド物のバッグを大事に抱える姉ちゃんを黙って見ていた。


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