嘆きの天使-ジュニアイドル葵の事情-
私は涙を拭い、
私は台所の蛇口をひねると
流れる冷水で顔を洗った。
そして
そのまま食事の支度を始め、
何事もなかったように帰ってきた
健太とお父さんを迎えた。
鍋からクツクツと
美味しそうな匂いに誘われて、
健太が隣にやってくると
「味見していい??」と覗き込んだ
「もう少しだから、
テーブルで待ってて」
慌てる健太に
テーブルを拭くように指示を出す。
鍋の中のシチューをかき混ぜながら、
雑誌のことを考えた。
とりあえずカバンの中に隠してある。
部屋のどこかに隠しても
狭い家では
いずれ見つけられてしまう。
煮立っている鍋の中を
じっと見つめたまま、
どうしようか考えた。
そうだ。
捨てよう。
それしかない。
出来立てのシチューをお皿に盛り、
テーブルに出す。
美味しそうにスプーンを進める健太と
黙って食べるお父さん。
美味しいのか、不味いのか、問うこともしなかった。
急いで私も夕飯を済ませ、
食器を洗うと
新聞を読んでいるお父さんに
話しかけることなく、
カバンを手に外へ飛び出した。