嘆きの天使-ジュニアイドル葵の事情-
缶コーヒーを私に渡すと、
向かいの公園に足を進め、
ベンチに腰を下ろした。
春先に買った
温かいコーヒーから、
冷たいコーヒーに変わり、
友井くんとこうやって話すまで
1シーズンかかってしまったことを実感した。
缶コーヒーのプラグを開け、
甘い香りが
さっきまで焦っていた気持ちを
落ち着かせてくれる。
「小阪って、柴田と仲良いんだよな?」
缶コーヒーを置き、
何気なく質問する友井くんに
「うん」と頷いた。
「この前、
フットサル部の練習を見に来ていたよな??」
「………」
何て答えたら良いだろう。
友井くんのことを見ていたとは言えない。
黙っている私の答えを
催促するように、
「好きな奴でも居たのか?」と、
質問が変えた。
「……えっ?」
「柴田か?
それとも……小阪か?
うちの部に
好きな奴がいるから見に来たのかなって」
紗希から
“我慢しないほうが良い”と
言われたことを思い出す。