嘆きの天使-ジュニアイドル葵の事情-



「お父さん!!!約束と違う!!」



私はテーブルの上に
身を乗り出し、

大きな声を上げた。



あんな思い、
二度としたくない。


カメラの前で裸になるのは、

絶対にイヤ!!



動じずタバコを吹かし、

お父さんがジロっとこちらを見た。



パチン!!!!



分厚い手の平が、私の頭に飛んできた。



「テーブルから降りろ!!

言われた通りにやれば良いんだ!!!」



乾いた音と
お父さんの怒鳴り声が

部屋中に響く。


私は頬はカッと熱くなった。




「お父さん!!

葵ちゃんにそんなことしないでください!!!」



慌ててお父さんを宥める緒川さんが、

私の顔を
「大丈夫??」と覗く。



私はその場に居られず、

急いで立ち上がり、
家を飛び出した。



階段を駆け下りると、

ちょうど帰ってきた健太とすれ違った。



「お姉ちゃん!!!どこ行くの?!」



涙を抑えることで精一杯で、

健太に反応する事が出来なかった。


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