嘆きの天使-ジュニアイドル葵の事情-
団地の敷地を抜け、
隣接している公園に辿り着くと、
膝を抱えるようにベンチに座り、
顔を隠した。
涙は誰にも見られたくない。
そして自分が売られることを
誰にも知られたくない。
流れる涙を手の甲で拭いながら、
ガタガタと震えていた。
陽が落ちると、
一気に気温が下がった。
Tシャツとジーンズだけで飛び出した細い身体を
秋風が一気に通り抜ける。
「寒いな……」
独り言が
膝の中で小さく木霊する。
その時、
キー!!!と
自転車の止まる音が響いた。
「おい!!葵!!!!」
頭を上げると、
視線の先に
自転車に跨ったダイちゃんが見えた。
一瞬、強い風が吹き、
髪の毛はブァっと舞い上がる。
自転車を止め、
こちらに向かってくるダイちゃんが
自分のジャンバーを脱ぎ始めた。
「お前、何やってるんだよ!!
オヤジさんとまた何かあったのか??」
そして温もりが残るジャンパーを
私の肩にかけた。
ダイちゃんは急に体温が下がってせいか、
ブルッと身震いした。