嘆きの天使-ジュニアイドル葵の事情-
「私は大丈夫だよ。ジャンバー着て」
「何、言ってるんだよ!!
青白い唇しているくせに!!」
「だって、
ダイちゃんが寒いじゃん……」
「俺は大丈夫!!気にするな!」
少しだけガソリンの匂いがするジャンバー。
だけど、
ダイちゃんが使っている
香水の匂いもする。
この香りがいつも落ち着かせてくれる。
となりに座るダイちゃんも
肩を落とし、
黙っていた。
沈黙が走る公園で、
カサカサと葉の音が響く。
「ダイちゃん……。
私……
いけないことしちゃったんだ」
安心感からか……
思わず口にしてしまった。
「どういうことだよ?
悪いことって何だよ?」
「うん……」
自分で切り出しておきながら、
やっぱり言えない。
言ったらダイちゃんに嫌われるかもしれない。
本当のお兄ちゃんのように
優しいダイちゃんは悲しむかもしれない。
「葵は何でも抱えすぎ。
もっとワガママになれよ。
イヤなことはイヤって言わないと」
「……うん」
ダイちゃんの言葉は
いつも素直に聞ける。
ダイちゃんは
私のこと一番分かってくれる。
でもやっぱり
あの事は言えない……。
「俺の前では素直になれよ。
話したくなったら
いつでも聞いてやるから」
「うん……」
無理に訊こうとしない優しいダイちゃん。
……でも私、
これからどうなって行くのかな?