嘆きの天使-ジュニアイドル葵の事情-
「おい?!どうしたんだよ?!」
ダイちゃんは、
目を丸くて私に向けた。
彼は西村大介。
同じ団地の向かいに住んでいる幼馴染だ。
高校には行かず、
ガソリンスタンドでアルバイトをしている17歳のダイちゃんは、
金髪が帽子から飛び出し、
耳には
2つのピアスが並んでいる。
一見遊び人に見えるが、
真面目で優しく、
いつも私たちのことを気にかけてくれていた。
「……ダイちゃん」
「どうしたんだよ。
健太がさっきから泣いてるじゃん」
抱きついている健太は涙を流していた。
私以外に
頼れる相手が現れて、
一気に安心したのだろうか。
「実はね……」
私はさっきの出来事をそのまま伝えた。
話して行くうちに安心感からか、
健太と一緒に涙が込み上げてきた。
「そっか……。
もう大丈夫だから」と、
声をかけてくれるダイちゃん。
私も怖かったんだ。
お父さんから
タバコを奪おうとしたときも、
本当は足も(スク)んだ。
でも健太を守れるのは私しか居なかったから……。