嘆きの天使-ジュニアイドル葵の事情-



あの日以来、
お父さんとは口を利いていない。



私も避けていたし、
お父さんも声をかけて来ない。



夕飯を食べには帰って来ても
すぐに出かけてしまう。


どこに行っているのか……
訊くこともなかった。



「健太……。
学校休んで一週間が経つけど、
明日から行けそう??」



私の問いかけに、

「うん……まだ」と
躊躇う様子を見せるが、

怪我は既に治っている。



「一回ゲーム止めて。

最近、ずっとゲームしてるよ」



その声に
ストップボタンを押した健太が

こちらを振り向いた。



「お姉ちゃん。

……僕、学校に行きたくない」



寂しく、消えそうな声だった。



「どうして?
もしかして、またいじめられているの??」



「……」



黙ったまま何も言わない健太に、

無理して
「行きなさい」とは言えなかった。



私もいじめられていていた頃、

“貧乏”

“バイキン”

“不潔”

そんな言葉を毎日のように浴びせられた。



一番辛かった言葉が

“死ね”だった。



それから私には生きている意味が無いのかな…って思った。



健太も同じ気持ちだったら、

学校に行きたくないよね……。


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