嘆きの天使-ジュニアイドル葵の事情-
ゲームを再び始めた
健太の頬を見つめ、
泥がつけて帰ってきたことを思い出す。
踏まれたり、
蹴られたり……
辛そうに我慢する健太の顔を思い浮かべると、
胸が締め付けられた。
手をギュッと握り、
その場が離れ、
自分の部屋の机に座った。
傷だらけの机は、
シホちゃんからのお下がり。
昔、流行った
“パラッパラッパー”のシールが
未だに貼られている。
机の上で頭を抱えていると、
電話が鳴り出した。
緒川さんかな……と
思いながら立ち上がり、受話器を取った。
「もしもし……」
用件が読めている分、
テンションが落ちてしまう。
「あ、もしもし!!
ラッキーフリークの緒川です!!
葵ちゃんだね!?」
今日もテンションの高い緒川さんの顔が頭に浮かぶ。
「はい。
先ほどお電話いただいたみたいで……」
「そうなんだ!!
こないだ話した件だけど、
お父さんから詳しく聞いたかな?」
お父さん?
また話が勝手に進んでいるの?
「いえ、何も……」
「そっか……。
実は昨日、お父さんから電話があって、
葵ちゃんがOKだって言うから、
契約書を交わしたんだ。
お金も昨日のうちに渡しちゃったんだけど……」
少し気まずそうに答える緒川さんに言葉を失った。